映画「善悪の刃」

弁護士のジュニョン(チョン・ウ)は、手掛けた住民訴訟が敗訴。

お金に窮し、学生時代の友人(イ・ドンフィ)をたよって、大手の有名法律事務所に見習い弁護士として何とか潜り込む。

名門大学でなく、地方大学中退で司法試験に合格し、粗野で本音をズバズバ言うジュニョンは周囲からも煙たがられる。

仕事は回ってこず、「無料法律相談」で、ヤル気のないまま漁師町に向かったジュニョン。

粗末な家に住むヒョヌ(カン・ハヌル)とその母(キム・ヘスク)は、多額の賠償金の返済に苦しんでいた。

ヒョヌは未成年の頃に強盗殺人の罪で10年服役、出所したものの、被害者への賠償金を公的機関に肩代わりしてもらったため、利息も含め、かなりの金額に膨れ上がっていたのだ。

「オレはやっていない!」とヒョヌは怒鳴り、心労と病気で失明した母も息子の無実を訴える。

ジュニョンは、「もしこの事件を再審に持ち込んで無罪にできたら、オレの名が上がるな。もっといい暮らしもできそうだ」と、功名心から、事件の弁護を引き受けようとした。

しかし、ヒョヌはジュニョンに、

「本当に人を殺してなんかいないんだ。オレは無実」と切々と訴え始めた。

取調べの刑事から激しい暴行を加えられ、無理やり自白させられたのだという。

話を聞くうち、ジュニョンは、これは口から出まかせなどではなく、重大な冤罪事件なのではないか、と直感。

当時、学校にも行かず、喫茶店でたむろするヒョヌは町の警官から目を付けられていた。

益山市の薬村五差路でタクシー運転手が深夜、刺殺される事件が発生し、近くにいたヒョヌは、乗っていたバイクの座席下からナイフが見つかった、という科で警察に連行されてしまう。

ジュニョンは、10年前の事件の目撃者がいないか、五差路に立ってビラ配りを始めた。

被害者運転手のタクシー会社をたずね、タコグラフ(運行記録計)を見せてもらうよう依頼。

当日、ヒョヌはバイクで接触事故を起こしていた。

五差路で実際に時間に基づいて「事件」の再現をやってみると、運転手をわずかな時間で殺して、ヒョヌが接触事故現場まで走るのはどう考えても無理。

再審に向けて動き出し、信頼できる人間が現れ、自暴自棄だったヒョヌが少しずつ変わってゆく。

バイト先でもらった給料を袋ごと、「弁護依頼料」として、ジュニョンに渡す。

ジュニョンは調べれば調べるほど、この事件の闇が深くなるのを感じていた。

ヒョヌを取り調べた刑事(ハン・ジェヨン)は強引な取り調べが多い、と問題になっているものの、上層部の検事の圧力があったのか、うやむやにされていた。

事件深夜、タクシー運転手が殺されるのを見た、という目撃者が現れた。

彼に会って話を聞けば、真相究明が前進する。喜ぶジュニョンに弁護士仲間の友人は、唐突に自分と新しく弁護士事務所を開かないか、と持ち掛ける。

だが、一転、検察からの横やりで、ジュニョンの調査は妨害され、目撃者の話も聞けなかった。ジュニョンの友人が裏切ったのだ。

警察からは、服役中のヒョヌが、取り調べの刑事に感謝して更生を誓う手紙もちゃんと残っている、冤罪はでたらめ、と反論が来る。

そのことをジュニョンが問いただすと、ヒョヌは怒りと悔しさをにじませながら、

「逮捕された時も拷問のような暴力を加えられた。服役期間なんて、軍隊に入隊すると思えばいい、と言われ、署名した。手紙も、書かないと出所ができなくなると脅された」と告白。

警察、検察にはびこる悪と、罪を無実の人にかぶせる不正に、怒りをたぎらせるヒョヌ。

再審へ、果たして持ち込めるのだろうか・・

この映画、韓国で実際に起こった冤罪事件をモデルにしているのだという。

かつての軍事政権時代ならいざ知らず、わりと最近でも、こういう強引な捜査が行われていたのか、と愕然。もっとも日本でも「足利事件」のように、強引な取り調べでの自白による冤罪事件が近年も発生している。

そういう点では、日本の司法関係者、警察関係者にも見てほしい映画だ。

カン・ハヌルは、心を閉ざした、粗野で複雑な心境を抱いた青年役を好演。

キム・ヘスクは息子を信じる、ゆるぎない愛情のお母さん役にぴったり。

チョン・ウは「レッド・ファミリー」にも出ていたそうなのだが、わたしあまり印象がないんですよ、見たんだけど。

でも今回は主役ということもあるのだけど、あまりにも大泉洋そっくりで(笑)、存在感ありすぎ。

ついでに言うと、邦題の「善悪の刃」というのもどうかなあ?

オリジナルタイトル「チェシン(再審)」そのまま「再審」でよかったのでは、と思った。

(7月11日、シネマート心斎橋

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